紛争の内容
依頼者のAマンション管理組合は、管理費・修繕積立金の未納が続く区分所有権者Bさんへの対応に苦慮しておりました。管理会社から未納になっている管理費等の支払いを求める通知を出しても、Bさんは「年末にまとめて1年分払う」などと述べて支払に応じてくれなかったため、Aマンション管理組合は総会を開き、区分所有権者らの同意を得て、弁護士にBさんへの管理費等の未納分と、管理規約に基づく未納管理費等の遅延損害金を支払ってもらうべく、訴訟の依頼することにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
訴訟を提起されたBさんは、裁判期日にて、「自分には昨年までの分でマンション管理費等の未納はない、今年の管理費等については、今年の年末にまとめて支払う」などと主張しました。しかし、管理会社の昨年分までの集金データを提示し、管理費等は毎月支払うことになっている旨管理規約を証拠として提出すると、自身の未納は認めるものの、やはり年末まで支払わない、などと改めて主張するようになりました。訴訟上の和解は難しいと思われたため、本件については裁判官に判決を出していただくことになりました。裁判官は、「訴訟期日の態度から、Bさんが将来にわたり毎月支払うべき管理費等を再度支払わない状態になる可能性が高い」として、Aマンション管理組合の請求を全面的に認め、これまで既に発生している未納管理費等だけではなく、将来的に発生する管理費等についても、支払いを命じる判決(「Bさんが将来本件マンションの区分所有権を失うまで、毎月発生する管理費等を支払え」という内容の判決のこと)を出しました。

本事例の結末
それから、依頼者であるAマンション管理組合の勝訴が確定したため、管理会社からBさんに対し、判決で認容された未払い管理費等の支払いを求める請求書を出したところ、Bさんは同請求書通り支払いをしてきたため、Aマンション管理組合の悩みの種であった滞納管理費は無事解消されました。

本事例に学ぶこと
マンション管理費等は月々発生するものです。通常の訴訟で認められるのは、「いくらの管理費が滞納されているか」という、「現時点」での滞納額のみの支払請求権となります。
しかし、そうであるとすると、通常の訴訟で判決をとっても,これまで未納を続けているような区分所有権者はその後も滞納がたまってしまい,また判決を取らなければならないという事態になりがちです。これに対し、今回のような将来給付判決をとれば「平成●年●月から債務者がマンションの所有権を失うまでの滞納分を支払え」という内容を得ることができます。つまり、再度訴訟をして、判決を取らなくてもよくなるということです。
むろん、このような将来給付判決については,債務者にとっても影響が大きくなるため、裁判所もすぐには認めてくれません。この将来給付判決が認められるためには,「債務者が今後も滞納を続けるだろう」と裁判官に分かってもらえるような、それなりの事実を主張し立証する必要があります。
将来給付判決というのは,管理費等の滞納に関しては、非常に効果が高いものですので、主張・立証の手間ひまはかかってしまいますが、弁護士に相談の上、これが得られるようにすべきと考えられます。