事案の内容
依頼者は、長年にわたり建物所有目的で土地を貸してきましたが、元々の地代設定が低廉なまま長年が過ぎてしまっていました。それにもかかわらず、土地の固定資産評価が上昇し、固定資産税の負担が重くのしかかってしまっていました。そこで、地代増額をするべく、弊所にご依頼されるに至りました。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)
弊所に相談される前、依頼者は借地人と地代増額の交渉をしていましたが、なかなかうまく話しがまとまりませんでした。そこで、弁護士が依頼を受け、裁判所に民事調停を申し立てるに至りました。
民事調停申立てにあたり、近隣市町村の地代と公租公課(固定資産税・都市計画税)金額と地代との比較値の統計資料を基にした適正地代を算定しました。それを基に、従前の地代から適正な地代へ引き上げることを求めていきました。
すると、相手方にも弁護士が就き、こちらが主張する地代は不当に高く、主張の根拠の合理性がないとの反論をしてきました。そこで、長年にわたる借地契約における賃料の推移・背景事情の説明、主張の根拠となる統計資料の合理性を裏付けるさらなる資料の提出を行い、地代の増額が適切であるのとの再反論を行っていきました。
借地人からは、底地を買い取りたい旨の打診もなされましたが、売買金額についてそれぞれの考え方に乖離があり、当初の方針どおりに地代の増額を求めていくことになりました。

本事例の結末
こちらの主張する新地代自体も適切なものであるというのが、民事調停委員の一人である不動産鑑定士の見解でした。しかし、元々設定されていた地代が低廉であり、いきなり大幅な地代変更をすることは難しいと思われました。そこで、不動産鑑定士という専門家の見地からのひとまず適正と考えられる新地代を、調停委員会が提示するに至りました。提示案の計算過程においては、客観的・合理的な方法によるもので、依頼者に有利な点も含まれていたため、提示案に基づいて新地代とすることで調停が成立しました。

本事例に学ぶこと
長期間にわたる借地の地代は、合理的な根拠もなく、長年の慣習として低廉なまま定められてしまっているケースがあります。しかし、急に適正地代に改めようとしても、借地人からは強い反発を受けます。長い目で見て、徐々に本来あるべき地代へ近づけていくことが、紛争解決の方策となります。

弁護士田中智美・弁護士平栗丈嗣