① 賃貸人と賃借人が明渡しの話し合いを行う場合

enomoto
a 未払い賃料をどうするか。
b いつ明け渡してくれるのか。
c 現状のまま明け渡すのか、それとも賃貸借契約にあるとおり原状回復して明け渡してもらうのか。
d 明け渡しまでに、例えば3ヶ月の期間を与えたとして、その間の賃料を払ってもらえるのか。それとも払わないでよいから出て行ってくれればよいのか。出ていくのであれば少しは減額するという話し合いをするのかどうか。
一番大事なのは、bの「いつ明け渡してくれるのか」という点です

通常は、賃貸人が賃借人に与える明渡し猶予期間は1~3ヶ月程度です。賃借人が長期の明渡し猶予期間を主張して譲らない場合は、賃貸人としては、話し合いを打ち切って、速やかに明渡しの訴訟をすべきです。明渡しの訴訟は、それほど時間がかかる手続ではありませんから、その方が解決の早道です。

② 合意書の作成

明渡しの話し合いが成立した場合は、賃貸借契約を解除した上で、明渡し期限を付与するという内容の合意書を作成します。
合意の内容にもよりますが、1つの例が下記の合意書です。

合意書

(甲)甲野 一郎
(乙)乙川 康夫
1 甲と乙は,後記記載の貸室(以下「本件貸室」という)に関する平成○○年4月8日付け建物賃貸借契約を本日合意解除する。
2 甲は乙に対し,平成○○年11月30日まで本件貸室の明渡しを猶予し,乙は甲に対し,同日限り本件貸室を原状に回復して明渡す。
3 乙は甲に対し,本件貸室の未払い賃料として,合計40万円の支払義務あることを認め,このうち20万円を平成○○年10月31日限り支払う。
4 乙が第3項の支払いを遅滞なく行い,また,第2項の明渡しを期限までに行ったときは,甲は乙に対し,未払い賃料の残額である20万円の支払義務を免除する。
5 乙は甲に対し,第2項の明渡し日まで1ヶ月金○○万円の割合による賃料相当の使用損害金を支払う。
6 第2項の明渡し期日後,乙が本件貸室内に残置した動産については,乙はその所有権を放棄し,甲が自由に処分することを乙は異議なく承諾する。ただし,処分費用は乙の負担とする。

埼玉県○○市○○町6丁目5番
家屋番号 ○○番
軽量鉄骨造りスレート葺2階建アパート205号室
床面積 ○○平方メートル
平成○○年9月15日
(甲)埼玉県○○市○○町3丁目3番6号
甲野 一郎 印
(乙)埼玉県○○市○○町6丁目8番12号
○○アパート205号室
乙川 康夫 印

③ 即決和解の申立

合意書を作成しても本当に期限までに明渡してくれるのか不安なときは、簡易裁判所に即決和解の申立をします。明渡しまでの期限が、3ヶ月を超えているかどうかが一つの目安で、4ヶ月、5ヶ月というような長期の明渡し猶予期間を取り決めたときは、即決和解の申立をした方がよいでしょう。
この手続は、賃貸人と、賃料不払いをしている賃借人とが簡易裁判所に行き、裁判官の前で事情を言って和解調書をいう書類を作成してもらうものです。この書類があれば、約束の期限に明け渡してくれないときに、すぐに明渡しの強制執行ができます。

※即決和解の申立書作成、裁判所での即決和解手続を弁護士に依頼した場合、費用は10万円~20万円程度です。
 なお、公正証書では明渡しの強制執行ができませんから、明渡しの場合は公正証書を作成すべきではありません。

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