紛争の内容
親から相続した土地の整理をしていたAさんは、そのうちの一部を処分しようとしていたところ、当該土地に古い「賃借権設定登記」がなされていることに気付きました。これまでAさんやAさんの親など、当該土地の貸主に当たる者らへの借地料の支払いは数十年にわたり全くなく、賃借権の設定日は昭和初期のもので、借地人となっているのはとある法人Bでしたが、既に清算会社となっているものでした。売却をお願いしていた不動産業者に相談しても、「これは不動産業者ではどうにもできない。」などと断れてしまい、Aさんはやむなく弁護士に依頼し、法的措置に踏み切ることにしました。
交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士にご依頼をいただいてから、法人Bについて調査したところ、同社の清算人となっていた元法人Bの代表者Cの所在なども明らかになったため、清算人Cを法人Bに対する訴状の宛名として、提訴をすることになりました。
提訴前に、清算人Cに任意の登記抹消がお願いできないか通知を出したものの、同人からは承諾を得られず、やむなく訴訟となりました。
本事例の結末
清算人Cは、任意の登記抹消には応じなかったものの、当該土地の借地料などを支払っていないこと、それによって土地の賃貸借契約が解除されることについては全く争わず、裁判所もこれらの事情を踏まえ、賃借権は既に解除により消滅していること、したがって法人Bには賃借権設定登記の抹消登記をすべき義務があることを認めました。
結果として、Aさんはこの勝訴判決に基づき、法人Bや清算人Cの協力を得ることなく抹消登記手続をすることができ、無事この土地を処分することができるようになったのです。
本事例に学ぶこと
長年放置されてきた不動産などに、古い権利義務の登記がついていることはあり得ることであり、特に令和6年4月1日から相続登記が義務化されたことから、このような事情が発覚することはしばしば出てくるかもしれません。
古い登記で、既に登記権利者が死亡・消滅していたとしても、対応することは可能な場合も多いので、まずは弁護士に対応を相談していただきたいと感じました。
弁護士 榎本 誉
弁護士 相川 一ゑ