紛争の内容
Aさんは、40年以上前から土地を借り、借地上の自宅で生活してきましたが、この自宅が老朽化してきたため、建替えを考えるようになりました。
そこで、地主に建替えについての承諾を得ようとしたところ、数年前に元の地主は亡くなっており、その子ら2名が現在の地主であることが分かりました。2名の地主のうち、Bさんは建替えを承諾してくれたのですが、もう一人のCさんは何度お願いに行っても文句を言うばかりで態度をはっきりさせず、なかなか承諾が得られませんでした。
そこで、Aさんのご依頼をうけ、借地上の建物の建替えにつき、地主の承諾に代わる許可を求めて、地方裁判所に借地非訟を申し立てることになりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
申立てにあたっては、建替え予定の建物の図面等を提出するとともに、建替えの必要性と相当性を詳細に主張しました。
Aさんとして相当と考える承諾料についても提示しました。
裁判所で開かれた審問期日には、Bさんだけが出頭し、Cさんは不出頭かつ何らの書面の提出もありませんでした。
Bさんとは承諾料についても早々に合意に至ったのですが、問題は、何ら態度を明らかにしないCさんでした。
そこで、裁判官と相談のうえ、裁判所にBさんと合意できた内容で「調停に代わる決定」を出してもらい、Cさんから異議が出なければそのまま確定させる、という流れで進めることにしました。
本事例の結末
承諾料200万円の支払いを条件に建替えを認める旨の「調停に代わる決定」が出されて、その後、Cさんから異議もなく確定。
本事例に学ぶこと
借地が複数名の共有になっており、賃貸人が複数名存在する場合は、建替えの承諾もその全員から得なければなりません。
本件のように、共有者の一部が建替えに反対している・承諾が得られないという場合は、借地非訟を申し立て、裁判所の許可を得ることで代替できますが、建替えを希望する借地人にとっては重い負担となることは否めません。
弁護士 田中 智美