令和6年6月7日に、国土交通省から新しいマンション標準管理規約の改正版が公表されました。多くのマンション管理組合では、この標準管理規約をベースに管理規約を制定しているものと思われ、その改正は社会問題となっている点を踏まえてのものです。今回は、そのような標準管理規約の改正部分に着目し、今後のマンション管理規約の見直しの参考にしていただくべく解説していきます。

マンション標準管理規約の令和6年改正について

マンションの管理規約とは

管理規約は、そのマンションのルールを定めたものであり、区分所有法第3条に準拠して総会の特別決議(議決権数、区分所有者数双方の4分の3以上)で決定され、区分所有者の権利義務、費用負担、意思決定の方法などを規定しています。

この管理規約に従うべきは、まずは区分所有者全員です。さらに、区分所有者だけではなく、区分所有者が当該マンションに住んでいる場合には同居の家族ら、また区分所有者から当該マンションを賃借する占有者(賃借人)に対しても、その規定された使用方法を守らなければならない義務が生じるものです。

管理規約には、更に細かい使用方法などを定める使用細則も添付されていることがありますが、総会で決定事項以外にも大原則として当然守るべきものが、管理規約なのです。

令和6年の改正の主なポイント

組合員名簿・居住者名簿の作成、更新の仕組み

組合員の住所等に変更があった際に管理組合へ届け出ることを記載しており、専有部分を第三者に貸与する場合においても、当該第三者(賃借人)に関する情報を管理組合へ届け出ることを定めています。

 また、組合員名簿を更新すること及び居住者名簿を作成・更新することも定め、理事長に年1回以上の名簿等の内容確認義務を追記しました。

所在等が判明しない区分所有者への対応

区分所有者の所在等が判明せず管理に支障を及ぼす場合において、管理組合が所在等不明区分所有者の探索を行った場合に、その探索に要した費用を当該区分所有者に請求することができることを定めています。

区分所有者が管理費等を支払わなくなるなどして、管理組合が対応をせざるを得ない場合も、その費用の持ち出しを防止するためのものといえるでしょう。

修繕積立金の変更予定等の見える化

総会において、長期修繕計画上の積立予定額と現時点の積立額の差や、修繕積立金の変更予定等を明示すること、マンション売買時の購入予定者に対する管理情報提供項目例に長期修繕計画上の修繕積立金の変更予定額及び変更予定時期を記載することを新たに明確化しました。

修繕積立金は、マンションの老朽化・物価の高騰などにより当初の予定よりも高額化することがあります。そのようなリスクから、見える化の必要性は相対的に高まっているといえるでしょう。

総会・理事会資料等の管理に関する図書の保管

 総会及び理事会で使用した資料を保管することや、管理規約を変更した際に、変更内容を反映した冊子を作成することが望ましいことを追記しています。

総会等の適正化・透明化、分かりやすい管理規約を目指すという方向性といえるでしょう。

EV(電気自動車)用充電設備の設置の推進

 EV用充電設備を設置する際のルール等をあらかじめ定めておくこと、EV用充電設備の設置工事を行う際の決議要件の考え方、マンション売買時の購入予定者に対する管理情報提供項目例にEV用充電設備に関する情報を記載することが明らかになりました。

 近年のEVの普及に沿った改正といえるでしょう。

宅配ボックスの設置に係る決議要件の明確化  等

 同じく、近年の通販等の必要性に応じた改正、マンション内のトラブル防止という側面が見られます。

標準管理規約改正に伴って

 以上が簡単な標準管理規約の改正ポイントですが、例えば最初の名簿の作成や所在不明区分所有者への対応などは、日本の核家族化・高齢化のほか、投資マンションとして購入したマンションの放置など、社会的な問題を多分に含むものといえるでしょう。

 既に生じているマンションの問題に新たな管理規約で毅然と対応するためにも、早期に現在の管理規約を見直し、新たな標準管理規約と見比べてみてはどうでしょうか。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 相川 一ゑ

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