紛争の内容
建築業者に建物工事及びその敷地工事を依頼したところ,工事完成後,建築業者から追加工事費用を請求されました。施主は,工事の途中に,建築業者から追加工事の見積書や請求書を受け取っていなかったため,追加工事であることを争いました。その結果,建築業者から訴訟を提起されました。
交渉の経緯
訴訟では,双方の主張内容に開きがあったため,安易に妥協することはせず,第二審まで争いました。
本事例の結末
第二審では,受命裁判官より和解勧告がなされました。その結果,建築業者は400万円近い金額の減額に応じたため,和解が成立しました。
本事案に学ぶこと
建築工事は,一般人にとって難解な図面・用語が用いられ,なおかつ,契約時に付属する見積書・設計図書の内容が概括的な記載にとどまることが多くあるため,後になって紛争になることが少なくありません。施主にとっては,高額な費用を掛け,建築物に思い入れを有していることが多いので無理もありません。
本件では,追加工事(と主張された)部分が「本工事に含まれる」と主張した上,そのように考えなければ説明の付かない事実や書面上表れた矛盾点を指摘しました。
ポイントは,裁判官の合議体による審理が行われる第二審までしっかりと争い,裁判官の心証を踏まえた和解勧告を受けて,和解に至った点です。日本では,三審制をとっていますが,事実認定を行うのは第二審までであるため,当事者双方にとって,裁判官の心証開示はプレッシャーとなります。第一審で安易な妥協をせず,第二審まで徹底的に争うのも選択肢の一つといえます。