紛争の内容
区分所有マンションの管理組合からの相談で、一部の区分所有者(分譲マンションの一室の所有者)が、規約に基づいて全員で負担している管理費や修繕積立金を支払っていないので、回収したいとの内容でした。
そこで、最終的手段としては、区分所有法に基づく強制競売により退去させることとはいえ、その前段階で、回収の糸口がないか、交渉を進めることとしました。
交渉・調停・訴訟などの経過
まずは、協議を開始したところ、相手方は、管理費や修繕積立金の支払義務があることは理解を示しつつ、別の問題について不満を抱いていることが判明しました。そのため、弁護士としては、必要不可欠とは言えませんでしたが、別の問題について、組合側ともよく調整の上、問題解決を図りました。
本事例の結末
その結果、当初は支払を渋っていた区分所有者は、問題が解決されたことに満足したのか、滞納していた200万円もの管理費や修繕積立金を一括で支払ってもらいました。
また、今後も同様に滞納が生じたら困るので、合意書を締結し、その後はきちんと支払うことを確約してもらうことにしました。
本事例に学ぶこと
紛争は様々な形で現れます。時に、依頼者の問題意識と、相手方の問題意識とが異なり、いわばボタンの掛け違いにより紛争化している案件もあります。今回は、滞納管理費という問題解決のために、別の問題を解決してあげたことにより、結果として滞納問題も解決したという少し変わった事案でした。本来、管理費の支払義務は変わりませんので、裁判を起こせば、勝訴する問題でした。そのため、別の問題について解決することが不可欠ではありませんでした。しかし、裁判を起こすことは手間暇、時間もかかります。そのため、相手方が気にしている点を解消してあげることが、結果として紛争の早期解決につながることもあるということです。
弁護士は、依頼者の代理人とはいえ、紛争の当事者よりも冷静な立場におり、お力になれることもあると思います。
弁護士 時田剛志