紛争の内容
賃貸借契約を締結していましたが、賃借人からの賃料が支払われなくなってしまいました。
賃借物件には、賃借人はすでに住んでいない状態で、近隣住民にお話しを聞くと海外にいるようですが、所在がわかりません。この賃借人との賃貸借契約を解除したいという物件オーナーから依頼を受けました。
交渉・調停・訴訟などの経過
賃貸借契約を解除するには、解除の意思表示を相手方に到達させることが必要です。
所在不明の方に意思表示を到達させるには、管轄の簡易裁判所に公示送達の申立てをすることが必要となります。
そのため、
①相手方に解除の意思表示を記載した内容証明郵便を送付し、それが届かないこと
②現地調査をし、賃借人がすでに賃借物件に居住していないことの報告書を作成
③入国管理局に照会をかけ、賃借人が国外に出たまま日本国内に再入国していないことを確認
したうえで、公示送達の申立てをしました。
本事例の結末
裁判所にて公示送達がされ、賃貸借契約解除の効果が発生。
その後、到達証明書を取得することにより事件は終了しました。
本事例に学ぶこと
賃借人がいないので、そのまま勝手に賃貸人が別の人に貸してしまっても良いのではないかとも思われますが、賃貸借契約が解除されていない限りは、他の人と勝手に賃貸借契約を締結することはできません。公示送達という方法によって解除の意思表示を到達させるには、少し時間がかかりますが、次の賃貸借契約を適法に行うためにも、行っておいた方がよい作業と思われます。
弁護士 田中智美
弁護士 池田味佐