紛争の内容
 Aさんは、不動産業者Bが分譲していた一戸建て住宅を購入しました。しかし、この一戸建て住宅は、同じくBが売却していたその他の分譲住宅と、同じ一筆の土地上に建設されており、土地その他の分譲住宅を購入していたC、Dと共有となっていたのです。Aさんは、自分が購入した一戸建て住宅を売ることも考えておりましたが、敷地部分がC、Dと共有となっていると、土地と建物を合わせて売るにも支障があると考え、C、Dに対しこの敷地部分を分筆しようと持ちかけました。しかし、C、Dに通知を出しても、回答はなく、やむをえず交渉事件として弁護士に依頼することとしたのです。

交渉・調停・訴訟などの経過
 Aさんから依頼を受けた当職は、C、Dに受任通知を出しましたが、やはり反応はありませんでした。交渉で土地の分筆が出来ないということで、本件は「共有物分割訴訟」を提起することとなりました。

本事例の結末
 C、Dは裁判所からの訴状送達を受けて、初めてAさんの問題意識に気づき、共有状態である土地を分筆するメリットが自身らにもあることを知りました。その後は、裁判所主導の下、現在の敷地利用状況及び持分も踏まえ、測量を行い、分筆登記の上、各持分を相互に譲渡し合う旨の和解を成立させました。これにより、AさんはC、Dの協力なしに登記手続をすることもでき、無事土地の共有状態を解消することができたのです。

本事例に学ぶこと
 交渉相手が、必ずしも法律に詳しかったり、交渉に慣れているとは限りません。交渉によって持ちかけられている内容が、自分にとって有利であっても、交渉に応じてもらえないこともあるので、その場合には訴訟など強制的に相手方に参加せざるを得ない場を設けることも必要になってきます。交渉できない相手がいるときには、訴訟も早急に検討すべきと感じました。

弁護士 相川一ゑ