紛争の内容
家主・賃借人間の建物賃貸借契約は30年以上も昔から継続していると推測されるところ、その後、家主、賃借人、仲介に入っていた不動産会社にも何度か代替わりが生じ、契約や経緯の詳細が不明となっていました。
相談者は10年以上前から当該建物に入居していた転借人でしたが、この度、代替わりした家主から、無断転貸であるとの理由で退去を求められました。

交渉・調停・訴訟などの経過
相談者(転借人)には、転貸借について承諾を得たとの客観的証拠(書面など)がありませんでした。
訴訟では、客観的証拠の無い主張が認められることは難しく、その意味では不利な状況でした。
しかしながら、入居してから10年以上、家主から文句を言われたこともなく、建物の修繕や管理を不動産会社に依頼することもあり、何ら問題なく入居を続けてきたという事情がありましたので、この点を強く主張しました。
一方、家主側の主張としては、そもそも相談者が入居していたことすら知らなかった、不動産会社も事情を知る者がおらず言われるまま対応していただけだ、というもので、議論は平行線を辿りました。

本事例の結末
相談者は、家主にはどうしても建物を退去して欲しい理由があるのだということを汲んで、最終的に退去すること自体は受け入れましたが、退去のための準備期間をある程度要しました。
一方、家主としては、法的手段によって退去を実現しようとすると、判決確定までに時間がかかり、さらにそこから強制執行の手続きを踏まねばならないなど、時間とお金と手間がかかることが予想されました。
これらの点を考慮して、和解成立から6ヶ月後に明け渡す、和解金として、家主は転借人に400万円を支払うということで和解が成立しました。

本事例に学ぶこと
法的な紛争が生じたからと言って、必ず判決によって解決をしなければならないということはありません。
本件のようにお互いに譲歩できるところを探って、和解によって解決するということが、結局お互いにとって良い解決策となることも多くあります。
しかしながら、当事者同士の話し合いだけだと、感情の対立が先に立ってしまい、落としどころを探るどころではないこともしばしばあります。
そのような場合は、ぜひ弁護士にご相談頂き、事案の整理をし、必要に応じて弁護士を代理人にして、交渉を進めることをおすすめいたします。

弁護士 森田茂夫
弁護士 木村綾菜