紛争の内容
自宅建物の築年数が経過してきたため、床の張り替え等のリフォーム工事を業者に依頼した、施工中に何度かやり直しを求めた部分もあったが、完成後に従前は発生していなかった床鳴り等がするようになってしまった、施工業者と話をしても埒が明かないので、対応をお願いしたいとのご相談でした。
床鳴り等については様々な原因があり得るため、リフォーム工事に問題があるかの調査を含めて交渉事件の代理人として受任しました。
交渉・調停・訴訟などの経過
まずは施工業者に対して原因調査の依頼を行いましたが、床材の特性によるものであるとして施工の非を認めることはなかったため、外部の建築士に協力を求め、床鳴り等の原因を調査してもらうこととしました。
そうしたところ、床下の施工が通常と異なる施工方法によっていることが判明し、それが床鳴り等の原因となっているとの調査結果となりました。
当該調査結果をもとに施工業者と協議を行いましたが、議論は平行線であったため、やむを得ず、リフォーム工事に瑕疵があることを前提とする損害賠償請求訴訟を提起しました。
訴訟では、裁判所の選任する建築士が専門委員として参加し、瑕疵があると主張される部分について双方の言い分を整理し、その後、現地見分を行い、専門委員の見解を確認することとなりました。
専門委員の見解は、床鳴り等の原因は多岐にわたり、明確な特定が難しい部分ではあるが、現地を確認したところ、生活をする上で支障が出るであろう施工箇所が確認されたため、少なくともその点については補修の必要を認める、補修費用相当分の支出はあり得る、というものでした。
本事例の結末
専門委員の見解を前提に裁判官の心証を踏まえ、和解協議となりました。
施工業者は支払いを行うこと自体を渋っていましたが、最終的には施工業者が100万円の解決金を支払うという内容の和解が成立しました。
本事例に学ぶこと
建築関係の紛争は、施工方法一つとっても専門家により適切と考える手法が異なり、複数の原因が折り重なって一つの現象を引き起こしていることも少なくないため、不良施工といえるかどうか、また、不良施工の結果が損害賠償義務の発生する状態にまで至っているかの判断が難しい領域といえます。
建築関係の技術的な部分について司法関係者はほとんど素人といってよい状態ですので、専門家である建築士の協力を仰ぐことが重要となってきます。