紛争の内容
東京都区内の隣地間の問題です。
依頼者は、共同相続した土地を単独所有となり、登記を備えることができました。
それまでは、地元不動産業者を管理会社として、駐車場として貸していました。
依頼者は、同地を売却処分したく、隣地(2件)との境界の内側に、ブロック塀(3段積み)を設けることとしました。
しかし、隣地からの土砂(盛土)が境界を越えて、所有地を侵害しており、また、隣地の境界付近に植えた樹木が境界を超え、また、その根が依頼者土地に入り込んでおり、その切断も行う必要がありました。
そこで、費用はすべて依頼者が負担するので、その了解を得たいと考えました。
しかし、隣地隣人の方とは20年以上交流がなく、代理人を立てて申入れを行うことになりました。

交渉・調停・訴訟などの経過
本件不動産は、売却を予定しておりますので、境界の確定がなされているのかを確認しました。
同土地付近は、平成10年代に、行政主導で、協会の確定作業が行われており、確定の測量図面が作成されており、それを前提に、本件土地の並びに立つマンションが左右に建設されていました。
現地の境界標の確認をしましたところ、民民境界・官民境界いずれも金属プレートやコンクリート杭が設けられ、改めて測量して、現地の境界標(杭)を設ける必要は認められませんでした。
代理人弁護士から、盛土や植栽が越境している隣地チン人の方宛に、上記趣旨の連絡文を差し上げましたが、一向に応答いただけませんでした。
依頼者には、簡易裁判所での話し合いの手続である民事調停の申立ての利用が好ましいかもしれない、4回目の通知で応答がなければ、民事調停申立てやむなしとなることを予告して、4回目の連絡を差し上げました。ようやく、隣人の方から当職宛に電話連絡がありました。
越境している植栽や流れ出た盛土を撤去していたため返事が遅れていたこと、一度、自宅で面談し、説明・打ち合わせの機会を設けてもらいたいとのことでした。
隣人の方のお宅に面談に伺い、当方依頼者の方針と、協力していただくことのご説明をしました。
そして、現地の境界の状況や、近隣の境界標の設置状況と図面との照合を行い、現地付近の状況を隣人の方と再確認しました。
今後の段取りを説明し、当方依頼者の外構工事業者と事前打ち合わせをして、工事に着工することになりました。
日程を調整し、当方依頼者の頼んだ外構工事業者、現場担当者、駐車場管理業者(売却の仲介予定業者)と当職、隣人本人、関係者が一堂に会し、境界の位置と、境界線の内側に設ける外構工事の説明、当該外構に支障となる植栽の処理についての協議をしました。
当該外構(ブロック塀)は、隣地の盛土部分の土留めの役目も果たすものとなります。
そして、このブロック塀を設ける基礎を気付くために、隣地に型枠の設けることの理解と協力が必要となり、その説明をしました。
植栽の中には、太くなった根が、当方依頼者土地に侵入していることから、根を切断することの了解されたいと申し入れましたところ、隣人は懇意の植木業者に確認したいとのことで回答を待ちました。
これらを調整し、実際の外構工事が行われました。

本事例の結末
依頼者所有土地には隣地が二筆接触しており、その協会の延長線上は一直線ではありません。
そこで、もうけられたブロック塀は、三筆の土地が交わる境界杭(コンクリート製)を一部またぐ形で、また、そのブロックのカットし、その空間から境界杭が確認できるよう、業者が工夫しました。
これらの工事の完成により、依頼者の土地を売り出すに好ましい状態を実現しました。

本事例に学ぶこと
本件依頼は、20年以上も交流が途絶えていた隣人間の協力調整の依頼でした。
最初のご案内の連絡文から、4カ月以上も応答がなかったときには、民事調停の申立ても検討し、その旨を伝えたところ、ようやくお返事がいただけました。
連絡がつき、電話でのやり取りができてから、一気に協議が進みました。
民事調停を申し立てても、出頭していただけない方もあります。
しかし、このまま応答いただけないと、「不本意ながら」とか、「誠に遺憾ではありますが」として、裁判所の手続をとらざるを得ないと予告すると、本件のように、応答していただけ、話し合いで解決することもあります。
弁護士は、裁判手続きをとるのは専門ですから得手ですが、全て裁判手続きがよいかといえば、隣地隣人関係などの解決には、丁寧な説明が可能なは話し合いの手続が最適な場合が多いと感じます。
ご参考になればと存じます。

グリーンリーフ法律事務所 弁護士 榎本誉