紛争の内容
建物賃貸借の賃借人には賃料保証会社がついており、その保証限度額を超えた入居者に対しては、賃料不払いによる賃貸借の解除に基づき、建物明渡訴訟を提起し、退去明渡を実現しました。
建物明渡等請求事件の判決を債務名義として、未払い賃料等の債権回収の依頼を受けました。
交渉・調停・訴訟などの経過
債権回収のためには、費用対効果がよいのは、預貯金の差押えと、給与の差押えの各債権執行です。
そのためには、弁護士会照会の手続をとって、債務者の預金口座の有無を調べることになります。
各金融機関に対し、債務者名義の預金情報を開示してもらうためには、判決が確定しているにもかかわらず、支払ってもらえていない状況であるとして、判決の確定証明書が必須となっています。
そこで、まず、確定証明申請をし、獲得します。
債務名義における明渡請求の付帯である未払い賃料等の金銭請求の債権の回収や貸倒処理のために必要であるとして、弁護士会照会の手続を申請します。
都市部の住居の賃借人債務者の場合には、依頼者の希望は、大手都市銀とゆうちょ銀行が調査対象です。
他方、東京都、埼玉県以外の、依頼者の管轄エリアである栃木県、群馬県、長野県については、大手都市銀行の支店が少ないことから、同金融機関口座を保有する人物があまり多くないという経験則に基づき、地方銀行、地方金融機関も調査対象となります。
弁護会照会の結果、ある金融機関口座を保有していることが判明し、同時に、過去6か月の取引明細を開示してもらえましたので、その内容から、給与の振り込みがあることも判明しました。
そこで、改めて、同債務名義に基づき、給与の差押命令の申立てをすることになりました。
債務者の住所の特定のために、住民票を取得し、申立書に添付します。
申立て後、書面審査を経て、発令されました。
第三債務者である、債務者の就業先は支払の意思があるとの陳述書を提出しましたので、その後、未払い債務の簡裁に至るまで、月々取立てを行い、執行裁判所には取立ての結果を報告する取立て届を提出しました。
本事例の結末
依頼者は満額の回収がかないました。
その回収後の、最終の取立て届を提出するとともに、同申立てを取り下げました。
その翌日、同債務者の代理人弁護士から、破産の受任通知の送付を受けました。
依頼者は、残債務はなしとして、債権届をしたそうです。
本事例に学ぶこと
債権執行をして、債権回収をする場合のネックは、それにふさわしい第三債務者の把握です。
強制執行をするための、債務名義を保有する場合委は、弁護士会照会を通じて、第三債務者調査をします。
債務者名義の預金が判明しても、残高が金賞過ぎて、手続倒れになる場合もあります。
しかし、勤務先からの給与振り込みの情報を獲得することがかなう場合もあり、本件では、その給与差押をとることができ、債務者の破産手続のための、受忍通知前に、全額の回収ができた事案です。
債権回収のために、判決や和解調書などの債務名義を保有するが、その後の強制執行による回収については、その他の方法もございますので、ご相談・ご依頼いただければと存じます。
弁護士 榎本 誉