紛争の内容
ご依頼者の方は、新築建物を借主の方へ賃貸借契契約に基づいて貸渡しました。
この建物を賃借した方は、賃貸借契約の範囲内で建物の事務所仕様で紳士くされた室内を、賃借人の事業のため、仕様変更を行い、様々な設備を導入しました。
建物の仕様変更自体は双方の合意で行われており、そうした合意がなされたうえで建物を賃貸借が行われました。
しかし、そのことを記載した契約書などの書面は作成されていませんでした。
そして賃貸借契約が終了し、建物明渡しとなった際に、賃借人の方は仕様変更後の状態に戻すことが原状回復の義務の範囲内であるとして、この限りで原状回復を行いました。
ですが、仕様変更前の、新築時の事務所仕様の状況に戻すことをご依頼者の方は求めていたため、ご依頼者の方は仕様変更前の状態に戻すべく原状回復工事を行う佛用があるとしましたので、敷金の返還額で争いが起きました。
そうした結果、賃借人の方から敷金を返還するように求められる訴訟が提起されたので、これに応訴することとなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
本件では原状回復の問題としてどこまで戻すことが必要であるかということが争点となりました。
賃貸借契約が行われた際にどのような合意がなされたのかということが問題となり、こちらとしては仕様変更前の、新築時の事務所仕様の状態まで戻す合意がなされていたと主張しましたが、書面上で原状回復の義務の範囲をどこに設定するかという記録が残されていませんでした。
また、当事者間でも原状回復義務の範囲について主張に食い違いがありました。
本件は、結局は金銭としていくらで解決をすることが適切であるかという問題でもあったため、どこか一定の金額で折り合いがつけられないかということも裁判所で議論されました。

本事例の結末
訴訟内にて主張反論が双方から行われ、おおむね主張反論が出尽くしたと思われるタイミングで、裁判所から和解をすることができないかとの打診がありました。
そこで、和解を行うにあたっての金額を議論し、最終的に和解を行うことで解決を図ることとなりました。

結果として、当初の請求から100万円以上の減額をするかたちで和解が成立しました。

本事例に学ぶこと
建物のオーナーをされていると建物に関して法的トラブルに巻き込まれることがあります。
本件でも、賃借人から訴訟提起がなされ、その応訴としてどうしたら良いかというところがご相談のスタートでした。
本件では、明渡後の原状回復は、新築時の事務所仕様に戻すという内容の明確な証拠が残っておらず、他方、賃借人は賃貸人と面談の際に、事務所仕様に戻すと話しましたが、訴訟ではそのような事実はないという、言った言わないという状況がありました。これらは、こちらが証拠関係上不利になる状態でした。
ですが、そうしたなかでも和解を行うことで少しでもこちらに有利な条件で事件を解決することもできます。
どのような事件の終わり方がよいかは事案によって様々ですが、少しでもよい終わり方を探る必要があります。

不動産関係でお困りの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 榎本 誉
弁護士 遠藤 吏恭