紛争の内容
ご依頼者様は、マンションを賃貸していたところ、ある賃借人が部屋の中をゴミだらけにしてしまったため、賃貸借契約を解除して立退きを求めたいということでご相談に来られました。
ご依頼者様によれば、該当の部屋にゴミが溜まっているために、夏場には腐敗臭が漂ったり、ネズミなどの害獣がマンション内に出たりしたとのことでした。
実際、他の賃借人の中には、それらの被害を苦にマンションを出て行ってしまった人もいたため、マンションの賃貸経営にも実害が生じていた状況でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
該当の部屋にゴミが溜まっていたということでしたが、弁護士としても部屋に勝手に入って確認することはできないため、マンションの外から、部屋の様子を調査しました。
もっとも、部屋の間取り上、外からなかなか中を見ることができず、また、カーテンも閉まっていたために、ゴミが溜まっているような様子は分かったものの、実際、どれほどゴミが溜まっているかを確認することはできませんでした。
賃貸借契約を解約するためには、信頼関係を破壊したといえるような事情が必要なところ、外から見えるゴミの状況では、正に信頼関係を破壊したと判断できるかは難しいところでした。
また、建物明渡訴訟を提起して、その後に明け渡しの強制執行を行うとしても、執行には多額の費用がかかるため、ご依頼者様からは任意に立ち退きをしてもらいたいという要望もありました。
そこで、本件は、賃借人と明渡しについての話合いを行うことが望ましいと考え、訴訟ではなく、民事調停を申立てることとなりました。
本事例の結末
調停期日に相手方は出席せず、調停の場で話し合いをすることはできませんでした。
もっとも、調停の係属中に、ご依頼者様が相手方と接触することができたため、任意での立退きを認める合意書を取り交わすことができました。
最終的に、民事調停を起こしたことで、相手方も立退きに応じる意向が生じ、任意での立ち退きを認めてもらうことができました。
本事例に学ぶこと
賃借人に立ち退きを求めるためには、賃貸借契約を解約しなければなりませんが、解約をするためには、信頼関係を破壊したと認められるような用法遵守義務違反などが認められる必要があります。
信頼関係破壊の判断が難しい場合には、明渡しについて民事調停を申立て、賃借人と話し合いをしてみることが有益な場合があります。
賃借人との関係で困っている場合には、一度、弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士 渡邉 千晃