紛争の内容
Aさんは、居住用の普通建物の所有を目的としてBさんに土地を賃貸してきました。
しかしながら、Bさんは遠方の親類と同居することになり、そこにはもう住まないため、不動産業者Cに建物を売却してしまいました。
Aさんはこの売買を承諾していませんでした。
後日、新たな所有者となったCから、Aさんのもとに「借地借家法上の建物買取請求権を行使する」旨の内容証明郵便が届き、対応を弁護士に依頼されました。
交渉・調停・訴訟等の経過
Aさんのご希望を伺うと、もと借地人のBさんとの間でも色々トラブルがあったので、土地が返ってくるのであればその方が有り難いとのことでした。
Cが提示してきた建物の買取金額は裁判例に照らしても相当なものであったため、早期解決のためにも金額につき争うことはせず、その代わりに、建物の所有権移転登記(C→A)にかかる費用を全額Cに負担してもらえないか交渉し、了承を得ました。
本事例の結末
Cに相当額を支払って借地上の建物をAさんが買い取り、借地を取り戻すことができました。
本事例に学ぶこと
建物買取請求における建物の時価は、「建物そのものの時価のみならず、いわゆる場所的利益(建物の存在自体から建物所有者が享受する事実上の利益)を参酌すべき」とされており、この場所的利益は、一般的に更地価格の15%前後とされることが多いようです。
本件の建物は駅に比較的近く、好立地の物件でしたが、Cの提示金額はこの裁判例に照らしても相当なものでした。
Aさんもこの点を冷静に見極めて、買取価格の争いに持ち込まなかったことで、早期解決を実現することができました。
弁護士 田中 智美