紛争の内容
Xさん(及びXさん家族)は、Aさん(及びAさん家族)に対して約60年に渡り土地を貸してきました。Aさんはその間にAさん所有の家を建て暮らしていましたが、Aさんが亡くなり、空き家となりました。XさんはAさんを相続したYさんに対し、本件土地を使用したいことから、土地の返還を求めました。なお、その間にAさんと締結した賃貸借契約が満了しました。
交渉・調停・訴訟などの経過
Xさんは、交渉にて土地の明渡しを求めていましたが、Yさんも土地の利用をしたいとして、交渉は難航しました。
そのため、Xさんは訴訟により明渡しを求めることとし、当事務所の弁護士が代理人となりました。
本事例の結末
訴訟では、Xさんに賃貸借契約の更新を拒絶する正当な事由があるかが主に争点となりました。
Xさんには、現時点では、居住用とまでは言いませんが、本件土地を利用したいという具体的な目的がありました。他方Yさんにも居住をしたいという希望がありました。
第1審の裁判所は、Xさんの土地利用の必要性とYさんの土地利用の必要性を比較検討した結果、Xさんの土地利用の必要性は一定程度あるが、それほど高度でないとし、他方Yさんの土地利用も限定的であるなどと評価しました。その上で相当程度の立退料の支払いで補完できると判断し、数千万円の立退料の支払い(Xさんが支払うと述べていた立退料の額)をすることによって、明渡しが認められました。
その後、Yさんより控訴がありましたが、Xさんが申し入れた金額とそれほど違わない金額和解により終了することとなりました。
本事例に学ぶこと
土地賃貸借契約の更新を賃貸人が拒絶するには、正当な理由がなければなりません。本件でもXさんに土地の利用をする必要性がどのくらいあるかということが極めて問題になりました。Xさんはかつてから、本件土地の有効活用を夢見て、いろいろと準備を進めていました。裁判ではXさんがいかに準備をしてきたかということを詳細に主張立証することにより、Xさんの土地利用の必要性が認められ、立退料の金額としても、Xさんの提案額が、きちんとした提案額であったことにより認められたものと考えます。土地使用の必要性を主張するには、どのような必要性があるかを具体的かつ、詳細に主張立証することが必要でです。
弁護士 森田茂夫