不動産を購入するに当たっては、住宅ローンを利用することが多いかと思われます。
この住宅ローンを利用できるか否かによって、不動産取得が可能となるか、取得をあきらめるかが決まるともいえます。
そのために、不動産売買契約の中には、ローンが通らない場合には、売買契約を解除でき、手付金を返還することを約定するローン条項が組み入れてあります。
また、ローン条項による契約解除期限についても取り決めしてあるのが通常です。
都内に戸建て用の土地を求めていた方がおりました。土地取得にあたり、土地探しを不動産業者に依頼していましたが、ある土地を紹介されて気に入り、その購入の手続をとる中で、住宅ローンの仮審査を受けました。仮審査を受けた銀行から内諾を得ましたので、土地売買契約の締結に至りました。
その後、売買契約書を取り交わし、仮審査で内諾を得ていた銀行に、正式にローンを申し込み、保証会社の審査を受けることになりました。その際の申込書に、申込者の健康状態(糖尿病)を正直に申告しましたところ、保証会社の審査が通らず、上記内諾を得ていた銀行からも、融資の承認を得られませんでした。
その後、他の大手都市銀行など2行からも、融資の承認を得られず、買主は、本件土地取得をあきらめかけました。しかし、再度、売主から、別の地方銀行の住宅ローン申し込みを勧められ、その申込を行いましたが、やはり不承認でした。
そこで、買主は、ローン条項に基づく契約解除、手付金の返還を求めましたが、売主は返還に応ぜず、訴訟となりました。訴訟の中で、売主は、買主のローン条項に基づく解除は、信義則違反であること、その理由として、銀行以外の、やや金利の高いローン会社に融資申し込みをしていないと主張しました。
しかし、裁判所は、金利の高いローン会社に融資申し込みをしていなくても、これまでに4社の銀行に申し込みをして、すべてローンを不承認とされていることから、ローン特約による解除を認め、売主に対して手付金の返還を命じました。