父と息子(長男)が工務店に来店し、二世帯住宅を建てたいとのことでした。
工務店の担当者は、父の様子を見て、判断能力があるのかどうかやや疑問がありましたが、父には財産もあり、また息子が来ていることもあって、父との間で住宅の請負契約を締結しました。
そして、部材の準備などをしていたところ、二男が来て、「父には判断能力がないため、裁判所で成年後見の開始決定を受けています。私(二男)が後見人となっているので、この請負契約は取り消します。請負代金は支払えませんし、すでに支払いをしたお金については返還してください」とのことでした。
この父のように、判断能力がなく、裁判所がその旨を認めて成年後見開始決定をした人のことを成年被後見人と言います。
後見開始決定をしてもらう目的は、父が自分の判断で、売買契約、請負契約などをしてしまい、経済的な損害を被るおそれがある場合に、父の行った行為を取り消すことができるようにするためです。
本当に父が成年後見の開始決定を受けているなら、請負契約を締結されても仕方がありません。そこで、登記事項証明書(法務局が発行してくれます)を持ってきてもらい、成年後見開始決定を受けていることを確認しました。
そして、すでに受け取った請負代金を返還しました。ほかにも、建築の着工に向けて準備をしていたのですが、この点の損害賠償を請求することはできません。
判断能力に疑問がある人の場合は、成年後見開始決定を受けているのかどうか、登記事項証明書(開始決定を受けていれば、その旨が記載されています)、登記されていないことの証明書(開始決定を受けていなければ、その旨が記載されています)によって、確認するのが安全です。