紛争の内容
遠方に住む親族が元実家の宅地に消費者金融からの借入のために根抵当権を設定し、根抵当権者から担保物競売の手続きをとられたのち、同申立てが取り下げられ、長期間放置されていた。
そこで、借入金についての債務整理の依頼を受けたところ、過払い金が発生するも、すでに10年以上経過していることを踏まえ、根等々権設定登記の抹消登記手続きの交渉を受けたものです。

交渉・調停・訴訟などの経過
① 引き直し計算をしたところ、過払いが発生していることが判明するも、10年以上を経過していることから、返還請求は断念。
② 根抵当権には、債務の弁済による債権の消滅の付従性がないため、根抵当権を当然に抹消請求できるものでないことから、当該貸金業者に対して、協力要請の文書を送付し、交渉を開始した。
③ 貸金業者担当者より電話があり、過払い金の返還請求には応じられないこと、当然に、消滅時効を主張すると告げられる。
④ ただ、抹消には協力するとのことで、追って、抹消のための小書類一式を送付するとのことであった。何らかの合意書を交わすべきか問うたところ、いつも交わしていないとのことであった。
おそらく、代理人との電話内容(消滅時効の主張、過払い金返還請求はしないことなど)は録音されているものと推測された。
⑤ しばらくして、抹消のための放棄証書類などの返還を受けた。

本事例の結末
任意の抹消に応じない場合、訴訟による抹消登記手続きの実現は困難が見込まれたため、民事調停の申立ても視野に入れたが、任意の協力を取り付けられ、安どした。
抹消登記手続は、当法律事務所のSnet会員司法書士を紹介した。

本事例に学ぶこと
借入の資金需要がある方が、銀行を利用できるとは限らず、本件消費者金融などのノンバンクからの借入となる。100万円以上の借入であったために、宅地に根抵当権が設定されたようである。
競売手続きの取下げは、当時、すでに、過払い状態になっていたために、執行裁判所からの勧告があったかで、取り下げた可能性もある。
取下げがなされれば、当該担保不動産の使用収益には支障をも取らさないため、長期間放置されたようである。このような事例が多数あるのではないかと推測される。担保権実行される可能性がないとしても、快くないものであるので、交渉は当事務所に依頼されたい。

弁護士 榎本 誉