紛争の内容
自動車販売店Aは、約6年前に、顧客であるB社から修理の依頼を受けるにあたり車を預かったが、修理にかかる見積もりをB社に連絡したところ、「高すぎるので修理はしない」と言われて、修理を断られた。
そこで、AはB社の担当者に対し、修理しない以上は車を引き揚げるよう再三お願いしたものの、様々な理由をつけられ、B社は車を引き取りにこなかった。
その後、Aでも店長や担当者の入れ替わりがあり、B社が置いていった車は長らく店舗の駐車場に置かれたままになっていたが、今回、この車を法的にきちんと処理したいということで相談があった。

交渉・調停・訴訟などの経過
まずB社に対して、事の経緯の説明と車の速やかな引き上げを求める内容証明郵便を送ったものの、B社の本社住所には「宛どころ不明」で届かず、現代表者の自宅でも受け取りがなかった。
そこで、B社の車が置かれたままになっている駐車場部分の明け渡しを求める訴訟を提起した。現在のB社には営業実態がなく、本社や支店として登記された住所には別の店が入っているなどして、訴状の送達は困難を極めたが、最終的には、現代表者の自宅で受け取りが確認でき、裁判を開くことができた。
B社側は誰も裁判に出頭して来ず、裁判は1回で結審となり、駐車場部分を明け渡すよう命じる判決が下された。その後、判決に基づいて明け渡しの強制執行を申し立て、現場で査定士が車の査定を行ったところ、車の価値はない(0円)との結果となったので、車は陸運車で撤去され、廃棄された。

本事例の結末 
販売店の駐車場から長期預かりのまま放置されていた車を撤去することができた。

本事例に学ぶこと
本件のように、自動車販売店が顧客の車を預かったまま数年間が経過してしまうという事例は決して少なくない。時間が経てば経つほど相手方と連絡がとりにくくなり、最終的には訴訟をするしかなくなるため、問題を先送りせずに、早めに対処することが肝要である。