紛争の内容
5か月分の賃料不払いなどある賃借人に対し、債務不履行に基づく賃貸借の解除をし、マンションの一室である建物明渡請求の訴訟を提起し、判決に基づき建物明渡の強制執行を申し立て、断行期日前に賃借人が任意退去した事件

交渉・調停・訴訟などの経過
依頼者は、駅至近の立地のマンションを所有するオーナーです。
賃借人は2度更新をした方ですが、令和6年の2月分から5カ月分の賃料の滞納などがありました。
そこで、建物明渡請求の依頼を受け、未払い賃料等の催告の通知を内容証明郵便と特定記録郵便で発送しました。
内容証明郵便は保管期間経過で返送されましたが、特定記録郵便は投函確認ができましたので、催告期限までの滞納賃料等の入金がなかったため、賃貸借の解除は有効であるとして、さいたま地裁に建物明渡請求の訴訟を提起しました。
内容証明郵便の催告書を受け取らない入居者は、裁判所からの訴状副本などの特別送達を受け取らない方である印象があります。
やはり、裁判所が本件マンションの一室宛に発した訴状副本などの特別送達を受け取りませんでした。

裁判所より、送達場所の調査等を命じられました。
本件賃貸借の締結する前の、入居申込書を依頼者から受け取っておりましたので、その書面を確認すると、勤務先の本社が申告されておりました。
そこで、被告の勤務先を送達場所とする、就業場所送達の上申書を提出し、同勤務先本社への特別送達がなされました。
これにより、本件建物明渡訴訟について裁判所が審理できる状態となりました。

第1回口頭弁論期日に、入居者本人が出頭しました。
被告は、翌月末までには任意退去する旨、それまでの滞納賃料等は親族が融資を受けるので、それを原資として支払う予定であると述べました。
裁判所から、訴訟の進行について意見を求められました。
当方依頼者は早期の明渡を求めていましたので、判決の言渡しを求めました。
強制執行を申立てるかは、今後の被告の対応次第としたのです。
裁判期日が終了後、法定を出て、被告と話をしましたところ、被告から任意退去の件や未払い賃料等の支払については、すぐに本物件の管理会社に連絡するとのことでしたが、週が明けても連絡はありませんでした。

やはり、明渡の強制執行申立てやむなしとして、強制執行を申立てました。
催告期日に現場に臨場すると、勤務が休みだったのか、在室していました。
念のため、執行補助者である執行の専門業者の担当者が室内の動産を確認し、費用見積もりを算段しました。
債務者である入居者は、催告期日に同行した管理会社の担当者に任意退去の日を報告すると約束しましたが、1カ月以内の日時を断行期日と指定されました。

本事例の結末
断行期日の3日までに、債務者は任意退去しました。
滞納賃料等の支払については、親族から管理会社の口座に振り込まれました。

本事例に学ぶこと
入居者が5か月分の賃料滞納があってから、令和6年6月に依頼を受けたものですが、催告執行の期日には9月下旬になっていました。
依頼者及び管理会社が、特に管理会社が訴訟案件に慣れていることから、申立に必要な資料の準備が円滑になされました。
ご依頼から明渡実現までには、およそ5か月から6か月くらいと説明しています。

3カ月以上の賃料不払いがあっても、3か月遅れで賃料支払いがある場合であっても、その遅れが解消されず、さらに滞納額が増えた場合には、やはり訴訟提起などの対応を検討されるのがよいでしょう。

弁護士 榎本 誉