紛争の内容
Aは所有アパートの一室を月額10万円でBに賃貸していたが、Bは賃料の支払いを怠るようになった。Aは管理会社を通じ、書面等でBに対して請求を続けたが、その都度理由をつけてはぐらかされ、遂には1年6か月分が滞納状態となった。
Aは、賃貸借契約の解除・建物の明け渡しを希望して弁護士に依頼した。

交渉・調停・訴訟などの経過
まず、Bに対し、未払賃料全額を5日以内に支払うよう求めるとともに、期限内に支払いがない場合は賃貸借契約を解除する旨の内容証明郵便を送り、賃貸借契約を解除した。
その後、裁判所に、未払賃料の支払い及び物件の明け渡しを求める訴訟を提起した。
裁判所に出廷したBは、「翌月末に全額を支払う」、「海外との取引でまとまったお金が確実に入るので、それを待ってもらえれば支払える」等と主張し、Bの言う期日まで裁判を続行したものの、約束の入金はなく、結局は物件の明け渡しを命じる判決が言い渡された。
しかし、判決が出た後も、Bが部屋に住み続けていたことから、上記勝訴判決をもとに建物明け渡しの強制執行を申し立てた。

本事例の結末
2度の強制執行(催告執行、断行執行)を経て、物件の明け渡しを実現することができた。

本事例に学ぶこと
本件では、上記のように部屋の明け渡しは実現することができたが、200万円以上になる未払賃料・賃料相当損害金については、強制執行の目途が立たず(賃借人が目ぼしい財産を持っておらず、その経営する会社も実態があるかどうかすら疑わしい状態)、回収できずに至っている。
もう少し早い段階で見切りをつけ、弁護士に依頼されていれば、ここまでオーナーの経済的損失が膨らまないで済んだものと悔やまれる。

弁護士 田中 智美