紛争の内容
賃貸人は、10年程前から、一戸建て(2階、広い庭付き)を賃借人(個人)に貸してきました。
賃借人は、この物件で犬の繁殖業を営んできました。
ところが、しばらく前から賃料の入金が滞るようになったため(5か月分)、契約解除と物件の明け渡しを求めて弁護士に依頼されました。

交渉・調停・訴訟などの経過
まずは、弁護士から賃借人に対し、未払賃料を5日以内に支払うよう求めるとともに、期限内に支払いがない場合は賃貸借契約を解除する旨の内容証明郵便を発送しました。
しかし、期限内に支払いがなかったため契約は解除となり、その後、直ちに物件の明け渡しを求める訴訟を提起しました。
訴状を受け取った賃借人が裁判に出頭し、「これまでの未払賃料は分割してきちんと支払うので、このまま物件を使わせて欲しい」との申出がありました。賃貸人は、この賃借人と契約締結前からの知り合いであること、これまで長く借りてきたもらったこともあって、賃借人の希望を受け入れていったんは和解をすることにしました(裁判は和解で終了)。
しかし、その後、賃借人は、和解条項で定めた支払いを怠ったため(「家賃2か月分の滞納が生じた時点で、契約は当然に解除される」と決めてあったのに、その後の滞納額が2か月分に達してしまった)、賃貸人は、和解調書をもとに、明け渡しの強制執行を申し立てました。

本事例の結末
催告執行(強制執行手続きの最初の段階)の後、賃借人が自ら業者を手配して物件の明け渡しを完了させたため、断行執行を実施することなく、明け渡しを受けることができました。

本事例に学ぶこと
本件の物件には、賃借人所有の犬が30頭以上飼育されていたため(かつ財産的にも価値の出そうな純血種)、そのままの状態で断行執行まで手続きが進んだ場合、オーナー側の費用負担も相当な額になることが予想されました。この点、賃借人が、「そこまでオーナーさんに迷惑は掛けられない」と奮起して、断行期日前に、自分の費用で犬舎を含め全ての引越しを完了させてくれたことが何よりでした。