紛争の内容
依頼者のAさんは市内にて駐車場付き一戸建てをBさんに賃貸していました。Bさんは、駐車場に1台の車を停めて使用していましたが、あるときから駐車場スペース以外にももう一台自動車を停めるようになってしまい、管理会社からも再三の撤去を求めたにもかかわらず、これに応じませんでした。さらに、Bさんは賃料の未納までするようになってしまいました。そこで、困り果てたAさんは、弁護士にBさんとの賃貸借契約解除と共に、建物と土地(駐車場)の明渡をするよう依頼することにしました。
交渉・調停・訴訟などの経過
まず、Bさんが駐車場に停めいていた車と、無断で停めていたもう一台の車は、Bさんのものではない可能性がありましたので、念のため弁護士照会を使ってこの所有者を調べ、所有名義人に通知を送りましたが、この所有名義人はいずれも「Bさんに車をあげてしまった」と回答しました。Bさんは引き続き契約の解除通知を出しても自主的に出ていこうとはしませんでしたので、やむなくBさんに対し提訴をすることになりました。Bさんは、「家賃は別の人が払ってくれる」などと記載した答弁書を提出しましたが、実際にこのような支払いをしてくれる第三者は現れず、裁判所はAさんの賃貸借契約解除を認め、Bさんに対し建物と土地の明渡を命ずる判決を出しました。
それから、依頼者Aさんの勝訴が確定したため、当職は勝訴判決をもって明渡の強制執行を申立てました。
本事例の結末
Bさんは最後まで自主退去をしませんでしたので、明渡の催告・断行を経て、建物と土地の引き渡しを受けました。
本事例に学ぶこと
賃借人Bさんは、「訴状記載の文章の意味が分からない」などということも主張して、頑なに建物の明渡などを拒みましたが、賃貸人とすれば、家賃等を支払わず、賃貸借契約の内容を超えて目的物以外の土地まで使用してしまうBさんとの信頼関係を維持することは不可能ですので、強硬な手段を選ぶこととなりました。
たしかに、賃貸人と賃借人間ではなるべく穏便に自主退去を求めたいところではあるのですが、それができない場合は、法的措置を執らざるを得ないケースもあると感じました。
弁護士 相川 一ゑ