紛争の内容
 オーナーから一括借上げを受けた不動産会社が、マンションの賃貸・管理を行っていたが、ある部屋の入居者(20代、単身入居)が更新料及び賃料6ヶ月分を滞納するに至った(総額約50万円)。
 不動産会社から何度も支払いを催促する内容証明郵便を送ったものの、一向に入金がなかったため、弁護士に依頼のうえ、物件の明け渡しを求める訴訟及び明け渡しの強制執行を行うこととした。

交渉・調停・訴訟などの経過
 弁護士より、当該入居者に対し、未払賃料等の支払い催促、並びに支払いがない場合の賃貸借契約解除の内容証明郵便を発送したところ、しばらくして入居者本人より連絡があり、「出て行かないといけないことは分かっているが、引越し費用がなかなか工面できないので、いつ明け渡せるか分からない」とのことであった。
 そこで、建物明け渡しを求める訴訟を提起し、判決言渡し後は強制執行の申立を行う、という通常の法的手続きを進めながら、弁護士が入居者と連絡を取り合い、任意の引越しを促し続けた。

本事例の結末
 明け渡しを命じる判決をもとに強制執行を申し立て、催告執行まで実施したところで入居者の引越しが完了したので、断行執行を行う前に強制執行を取り下げることができた。
 ※未払賃料等については、その後、不動産会社・入居者間で、長期分割のうえ返済していく旨の合意書を取り交わした。

本事例に学ぶこと
 本件のように、弁護士が入ると連絡がつくようになる滞納者もいるが、「必ず出て行きます」、「○○月頃引っ越す予定です」との話があっても、それが守られず、ずるずると居座られてしまうケースも多い。全ての人の言い分が信用できないというわけではないが、賃貸人としては、賃借人の約束を鵜呑みにせず、強制執行を申し立てることにより、物件に居られるリミット(断行執行期日の前日)を確定させることで、それまでに任意の明け渡しをする(引越しをする)ようプレッシャーをかけていくことも重要である。

弁護士 田中 智美