紛争の内容 
Aは、B(鉄工所を営む法人)に対し、Aの所有する土地を年額30万円で賃貸し、Bは土地上に工場及びプレハブ事務所を立てて営業を開始しました。
ところが、Bは経営不振に陥り、地代の未払いが 4年分に及んだため、Aは契約の解除と土地の明渡しを求める裁判を起こしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
Bは地代の免除を受けたと主張し、地代不払い自体を争う主張をしたものの、将来的にこの土地で営業していくだけの体力はなく、契約を解消したいという方向性は一致しました。
そこで、契約の終了→建物収去土地明渡しを進めるとして、問題は、実際の撤去作業をどちらが行うかでした。この点、Aは、これまでのBのいい加減な態度にうんざりしており、Bは信用できないとして、相応の撤去費用を現金で支払ってもらい、あとは自分の方で責任をもって撤去作業を行いたいという意向でした。
そこで、双方が撤去費用の見積もりを取り、地主側の見積では450万円と出ていたものの、およそ350万円ということで合意。
Bから350万円の支払いを受けて、あとはAの方で信頼できる業者に頼んで建物収去を行うことにしました。

本事例の結末
和解成立。
BからAに対し350万円を支払う。Bは、1か月の間にできるだけ荷物を搬出するが、その後に土地上に残した建物その他一切の財産の所有権を放棄し、Aがそれらを撤去・廃棄することに異議を述べない、との内容。
(なお、未払いの地代についてはAの厚意により免除)

本事例に学ぶこと
本件土地は広大で、残置されている在庫・工具類もかなりの量があったため、判決を得て強制執行をした場合には莫大な費用がかかることが予想され、しかもそれが地主の全額負担となりかねない状況でした。
財政状況の悪化した賃借人会社から、撤去費用の全額はカバーできないにせよ、費用の一部支払いを受けることができ、地主にとっては経済的負担を多少なりとも抑えることができたのではないかと思います。

弁護士 田中 智美