紛争の内容
 Aさんは10年ほど前からB氏に一軒家を賃貸し、B氏はそこに妻子とともに住んでいましたが、B氏が亡くなった後から賃料が支払われなくなり、近所に住むAさんが督促に訪れても居留守をされる状態が続き、4か月分が滞納となりました。
 B氏一家の貸家の使用状況は劣悪で、庭にまでゴミが山積みとなり、悪臭や虫の被害など近隣にも迷惑をかけていました。
 Aさんから依頼を受け、貸家の明け渡しを求める訴訟を起こすことになりました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 賃貸借契約を解除する前提として、B氏の戸籍調査を行って相続人を確定させた後(本件では6名の相続人がいることが判明しました)、全相続人に対して未払賃料の催告及び賃貸借契約解除の内容証明郵便を発送しました。
 そのようにして契約を解除した後、速やかに、裁判所に土地建物の明け渡しを求める裁判を提起。物件に居住していることは明らかなのにB氏の妻子らが訴状を受け取らないため、途中で所在調査が必要となりましたが、最終的には明け渡しを命じる判決が下されました。
 判決が言い渡されてもなお、B氏の妻子らは貸家にとどまっていたため、引き続き明け渡しの強制執行を申し立てました。1度目の執行(催告執行)の際、在宅していた妻と次男に会って話をすることができたのですが、結局、任意に引っ越してもらうことはできず、断行執行を行うことになりました。

本事例の結末
断行執行を経て、貸家の明け渡しを実現することができました。

本事例に学ぶこと
本件では、貸家がゴミ屋敷と化しており、室内は足の踏み場もないほどゴミがぎっちりと詰まり、動物の死骸なども出てきて、極めて不衛生な状態でした。庭に山積みにされたものと合わせてかなりの分量になり、断行執行には4時間以上かかったうえ、Aさんが負担した執行費用も約150万円にのぼりました。
それでも、ご依頼いただかなければ、「賃料は支払ってもらえない」「明け渡しもしてもらえない」という状態がずっと続いたと思います。
費用はかかったものの、未払賃料が4か月分になったという早期の段階でご依頼いただいたことで、早期の明け渡しを実現できたことが救いでした。

弁護士 田中 智美