紛争の内容
賃貸アパートを経営するAさんは、4年前から賃貸していたアパートの一室の賃料の支払いが滞るようになったことから、管理会社を通じて賃借人のBさんに賃料の支払を催促するなどしていました。結局管理会社の担当者がBさんの賃貸アパートの部屋を訪れても、Bさんの姿は見えず、部屋に荷物が残されている様子はベランダなどの様子から伺えましたが、Bさんとも緊急連絡先であるBさんの母親とも連絡が取れなかったことから、やむなく弁護士に相談し、強制的にBさんに建物を返してもらい、未納賃料の請求をすることとしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
依頼を受けた弁護士から、Bさんの勤務先を調べたりしたものの、Bさんは住民票も移しておらず、勤務先も賃貸借契約締結時のところを退職しているようでした。そこで、やむなく訴状送達先も調査を尽くしても不明であるとして、公示送達にて訴状を送達したものとしてもらい、訴訟手続を進めることにしました。

本事例の結末
その後、Bさんに対する明渡及び未納賃料については請求通り認定され、Aさんは勝訴判決に基づいて建物明渡の強制執行をすることにしました。
Bさんの所在も不明であるということで、催告執行から断行執行までは通常1か月弱の期間を設けるところ、2週間程度の期間の経過で断行執行期日の設定をしてもらい、Aさんは粛々と建物明渡の手続まで進め、無事新たな賃借人を募集することが出来る状態となりました。

本事例に学ぶこと
被告の所在が不明であっても、住民票の異動がなくそれ以上公的記録では追えないことや、勤務先も知れたる限りでは不明であること、緊急連絡先などからも情報を得られないことなどにより、公示送達をしてもらい、訴訟を進めることは可能です。近時、裁判所が公示送達について慎重になっている傾向は見られますが、どうしても被告の所在が不明であるという場合は、速やかに弁護士に相談し、法的手続をなるべく早く進めるのが良いと感じました。

弁護士 相川 一ゑ