紛争の内容
自動車修理工場から、「修理を依頼された顧客と連絡が取れず、顧客の住所地に行ってみても住んでいる形跡がない。会社の本店所在地に行ってみても、会社が存在する形跡がない。1年近くの長期預かりとなっているため、自動車を撤去してほしい」とのご依頼を受けました。
なお、この自動車の車検証上の所有者は会社(法人)になっており、自動車修理工場に自動車を持ち込んできた顧客は会社代表者でした。
交渉・調停・訴訟などの経過
自動車を撤去するため、土地(駐車場)明け渡しの裁判を起こしましたが、訴状の送達ができませんでした。そこで、弁護士が、顧客住所地や会社住所地に直接調査に行き、報告書を作成して裁判所に提出したところ、裁判所の入口横の掲示板に裁判が起こされている旨の書類を掲示することをもって、相手方(被告)に対して訴状が送達されたと見做す、「公示送達」という制度を使って送達を行い、勝訴判決を得ました。
本事例の結末
判決に基づく強制執行(自動車の撤去)を実施し、依頼者の望まれる結果に至ることができました。
本事例に学ぶこと
トラブルの相手方の居場所が分からず、裁判を通じての解決をしようにも、訴状を送達できないために、訴訟を起こすこともできないという事態に対処するため、法律上様々な送達方法が定められています。本件のように、修理代金の回収といった、相手方から直接何かをしてもらうことを求めるのではなく、何ら権原もないのに敷地内に相手方の物を置かれたままでお困りの場合、裁判を経て、強制執行することで、問題の解決を図ることができます。
相手方と連絡が取れないということであきらめることなく、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士 田中 智美
弁護士 平栗 丈嗣