紛争の内容
Aさんの経営しているアパートの敷地内駐車場に、ある時期から、契約者以外の者の車が停められ、そのまま放置されるようになりました。
数の限られた入居者用の駐車枠をこのまま占領された状態では困るため、Aさんからご依頼を受け、放置車両撤去のための手続きをすることとなりました。
交渉・調停・訴訟などの経過
まず、車の現在の所有者を確認するため、車のナンバーをもとに、弁護士照会制度を使って登録情報を取り寄せて、所有者(B氏)を確定しました。
その後、B氏に対し、弁護士から内容証明郵便を発送し、受領されましたが、応答が全くありませんでした。
そこで、速やかに、車両の撤去を求める土地明渡請求訴訟を裁判所に提起。
Aさん勝訴の判決がB氏に送達された後も引き取る気配がないため、強制執行を申し立てて、駐車場から車を撤去(執行業者がレッカー車にてその車を搬出、廃車)しました。
本事例の結末
適法手続きに則り、放置車両を撤去することができました。
本事例に学ぶこと
本件の放置車両は15年落ちの年式の古い車でしたが、よく手入れされていたのか外見は比較的綺麗でした。
また、裁判を起こす関係上、所有者であるB氏の住所の移転を調査しなければならなかったのですが、B氏は短期間に何度も転居を繰り返しており、どのような素性の人物なのか、Aさんとしても不安なところがありました。
中には、「勝手に置いていって放置しているのだから、うちの方で勝手に処分(車を廃車)しても構わない」とおっしゃる不動産オーナー様もいらっしゃいますが、このような考え方は危険です。放置車両とはいえ、裁判所を通さずに勝手に撤去、廃車してしまうと、後で、車の所有者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
本件のAさんのように、(相応の費用はかかってしまいますが)専門家に依頼のうえ、きちんと裁判所を通した適正手続きの中で撤去、廃車しておけば、後からどのような人物が言いがかりをつけてきても安心です。
弁護士 田中 智美