事案の内容
【ご依頼者の主張】
老朽化及びそれによる維持管理が困難になってきたことから、本件建物の賃貸借契約を解約し、賃借人に立ち退きを求めたい。

【相手方の主張】
本件賃貸借契約の解約については、「正当の事由」(借地借家法28条)がなく、解約することができない。建物の老朽化に対しては、基本的に、改修工事等で対処すべきであるから、賃貸借契約を終了させる必要がなく、「正当の事由」があるとは認められない。もっとも、条件次第では、賃貸借契約を終了させて、立退きに応じることを検討する余地はある。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)
建物の老朽化による取壊し等の必要がある場合でも、直ちに正当理由が認められるわけではないため、訴訟になったリスクを踏まえ、あくまでも交渉にて任意の明渡を求めることとしました。
 オーナー様のご意向としては、立退料を支払っても、立ち退きを求めたいとのことでしたので、立退き料の支払いなどの条件について、相手方代理人との間で、交渉を重ねました。

本事例の結末
当初、相手方は本件建物の敷地と建物の価格から明渡までの期間の賃料免除及び約200万円の立退料を求めましたが、当職らで交渉を重ねた結果、合意成立の翌月末までに立ち退くこと及び立退料150万円を支払うことにより、相手方に本件不動産から立ち退くことを承諾してもらい、任意の退去をいただくことができました。

本事例に学ぶこと
建物の老朽化による倒壊の危険を防止するという公益上の必要性があるだけでは、賃貸借契約解約のための「正当の事由」(借地借家法28条)を充足しないという可能性が非常に高く、「正当の事由」を補完するために、いくらかの立退料を支払うことが必要となります。訴訟で争ったとしてもそれは同様ですので、オーナー様側としては経済的に負担が生じてしまうものの、任意の明渡が可能なのであれば、立退料を支払っても交渉を進めるメリットはあると感じました。

弁護士 相川 一ゑ
弁護士 渡邉 千晃