紛争の内容
相談者の方は、賃貸マンションとその敷地の一部に入居者向け駐車場を有し、不動産賃貸業を営んでおられました。
ある日、賃貸マンションの4階から、投身自殺をした方がありました。
その方は、自家用車で駐車場に乗り入れ、マンションの階段で、4階に上がり、4階から身を投げたようでした。その方は、ごみ集積場の屋根に落ち、バウンドしたからか、大けがで済んだようでした。
救急車で最寄りの総合病院に運ばれ、治療を受け、入院生活をしていると事情を聴取した警察官から相談者は報告を受けました。
しかし、駐車場にはその方の車両が放置されたままであり、マンション入居者が契約した駐車場を不法駐車していることになりました。そこで、当該放置車両について、駐車場の明渡しを求めたいとのことでした。
放置車両の持ち主とは連絡がつかず、任意の交渉での明渡しはできない状態でしたので、訴訟を提起することとなりました。
そこで、訴訟提起のためにご依頼いただきました。

交渉・調停・訴訟等の経過
早速訴訟を提起しましたが、相手方が入院しているという情報がありましたが、退院している可能性がありました。そこで、まずは、自宅住所を送達場所としましたが、特別送達はかなわず、裁判所より居住調査を命じられました。
自宅を調査し、近隣の方から事情を聴取したところ、長らく自宅に戻ってきていないとのことであり、やはり、入院中であろうと見込まれました。
そこで、緊急搬送された病院宛に、弁護士会照会の制度を用いて、同病院に放置車両の所有名義人である相手方が入院中か、転院などしているかを照会をかけました。
しかし、こうした調査を行いましたが、緊急搬入先病院から弁護士会照会の回答はなされませんでした。
そこで、裁判所から調査嘱託をかけていただくこととし、裁判所を通じて調査を行うこととしました。
こうした調査を重ねた結果、ついに相手方の居所をつかむことができました。
相手方の居所がわかったところ、相手方に代理人弁護士が就任しました。
代理人弁護士を通して協議をすることとなりました。

本事例の結末
代理人弁護士が就任した結果、放置車両については相手方代理人が手配したレッカーにより搬出することができました。
放置車両についてはひとまず解決したのですが、放置車両があったことにより駐車場が長期間使えなかったため、この賃料相当額の損害金についても協議が行われ、結論として、満額の支払いを行うことで裁判上の和解が成立しました。

本事例に学ぶこと
放置車両がある場合、まずは相手方と交渉し、任意の撤去を求めることが考えられますが、相手方がこれに応じない、あるいは相手方とそもそも連絡が取れないという場合には、任意の交渉では明渡の目的を実現できません。
したがって、このような場合には訴訟を提起するほかありません。
訴訟を提起しても、本件のような事例では、車両名義人である相手方に送達ができない場合には、弁護士会照会や現地調査などの調査が必要となります。そして、本件では、緊急搬送先・入院先、そして、転院先の各病院宛に裁判所の調査嘱託を利用することで、相手方の居所を把握することができました。
こうした綿密な調査を行うには、このような手順を踏む必要があり、弁護士であるからこそ対応できる事案といえます。
本件のように相手方が音信不通であっても適切な手順を踏むことで解決に至る場合もあります。
不動産を巡ってお困りの場合には一度弁護士にご相談いただけますと幸いです。

弁護士 榎本  誉
弁護士 遠藤 吏恭