紛争の内容
テナントビルに入っている碁会所が断続的に賃料滞納をし、また、用法違反を改める約定を交わしながら、一向に改善されない賃借人テナントに対し、建物明渡訴訟を提起し、強制執行により退去実現をした事例

交渉・調停・訴訟などの経過
依頼者は、さいたま市内にテナントビルを有する不動産業者です。
長らく、同テナントビルで碁会所を自営する賃借人に賃貸していましたが、住居としての使用を許諾していないにもかかわらず、その利用を改めませんでした。
そこで、賃貸借更新に際し、住居使用をやめる旨の念書を交わしました。
しかし、賃借人は住居としての使用を止めず、また、賃料も断続的に支払うようになり、相談時には、6か月分以上の賃料滞納がありました。
賃貸人不動産会社から依頼を受け、賃料催告と不払いの場合には賃貸借解除をする旨の内容証明郵便と、特定記録付き郵便を発しました。
内容証明郵便は保管期間経過して返送されました。
本件テナント物件を住居としての利用している賃借人は居住しているはずですが、内容証明郵便配達時には不在だったようです。
しかし、再配達の連絡もせず、また、郵便局にも赴かなかったようでした。
特定記録郵便の配達時と同日付で、滞納賃料の一部が依頼者の口座に振り込まれました。
催告した滞納賃料全額とは到底評価できない金額であったため、賃貸借の解除は有効であるとして、本件建物の明渡を求め賃借人を被告として、訴訟提起をしました。
裁判所からの送達された訴状副本などは被告は受け取ったようでした。
ところで、第1回口頭弁論として指定された当日は、さいたま地裁本庁最寄り駅の浦和駅への宇都宮線が不通となり、原告代理人は指定期日への出頭が間に合いそうもありませんでした。
そこで、裁判所に連絡を取ったところ、原告代理人は法律事務所に待機し、オンラインで裁判所に出頭し、被告当事者の出頭を待つことになりました。
しかし、被告は答弁書を提出しておりませんでしたし、また、指定時刻にも出頭しませんでした。また、鉄道の不通により、出頭かなわない旨の電話連絡もありませんでした。
よって、裁判官は、審理を終結し、判決の言渡し期日を指定しました。
言渡しを受けた判決正本に強制執行のお墨付きである執行文を付与を受け、被告に足しいても判決による明渡の命令が送達されていることの証明である送達証明書を取得し、建物明渡の強制執行を申立てました。
催告期日には、賃借人は在室しており、執行官から任意の明渡の意向の有無などを問われていましたが、明確な回答はありませんでした。
そこで、建物明渡の強制執行を断行する、断行期日が指定されました。
断行期日にも、債務者在室しておりましたが、引っ越しの準備はほとんどしていませんでした。
執行補助業者が手際よくまとめ、本件建物から搬出し、運搬車両に積載しました。
執行官によると、本件建物内の残置動産の価値は認められないとのことでしたが、債務者は、碁盤などは引き取りたいと述べていましたので、執行補助業者の倉庫で保管することになりました。
引き取りには1カ月の猶予を与えましたが、結局、取りに来ず、動産類は廃棄処分となりました。

本事例の結末
断行期日は無事終わりました。
債務者は、執行官にも、賃貸人代理人にも、執行補助業者にも連絡をくれず、「引き取るから」と申し出ていた保管した動産も引き取りに来ませんでした。

本事例に学ぶこと
本件建物は、1階には飲食テナントが入り、本件建物の上階には整体の施術院が入る雑居ビルです。
賃借人は、住居としての使用を認めていないにもかかわらず、それを改めませんでした。
賃料の滞納もひどくなり、結果、賃貸借を解除して明け渡しを求めざるを得ませんでした。
賃料の不払いが長期化すると、任意の退去のための費用工面も困難になります。
結果、賃貸人の側で、訴訟を提起し、判決などの債務名義を得て強制執行して、明渡を実現することになります。
賃料不払いによる賃貸借解除が可能な事案については、速やかな訴訟提起、強制執行への移行が可能です。
当事務所にご相談、ご依頼をご検討ください。

弁護士 榎本 誉