紛争の内容
自動車販売店A社のもとに、JAFのレッカーにてB所有の自動車が故障車として搬入されてきた。
状態を調べたところ、ミッション自体が故障している他、諸々の部品を交換しなければならないことが分かり、修理には総額200万円以上かかることが判明した。
A社担当者からBにその旨を伝えたところ、「修理を依頼するかどうか検討して、また後で連絡する」と言い、車内の貴重品だけを持って帰っていった。
ところが、その日を境にBと連絡が一切取れなくなり、知り得た住所地に行ってみると確かにB宅の表札はあるものの、人が住んでいる気配のない荒れ模様であった。
それから1年後、突然、Bの代理人を名乗る男性からA社に電話があり、「Bは今刑務所に入っている」、「車はまだそちらにあるか?それは大事な車だから、自分が取りに行く」との話があったものの、結局その男性とも連絡が取れない状態となった。
そうこうするうちに2年以上が経過し、A社としてもこれ以上この自動車を置いておくこともできないため、車両の撤去を求めてご依頼となった。
交渉・調停・訴訟などの経過
A社の依頼を受け、駐車場の明け渡し(車両の撤去)を求める訴訟を提起。
弁護士の方でも被告となるBの所在調査を行ったが、全く手掛かりがつかめず、結局は「公示送達」事案となった。
勝訴判決を得た後、速やかに強制執行を申し立て、最後はBの自動車を執行業者のレッカー車に積み込んでどかし、廃車することができた。
本事例の結末
ご依頼から5か月程度で長期預かり車両を適法に撤去することができた。
本事例に学ぶこと
どの販売店でも抱えがちな問題であるが、所有者と連絡が取れない等の事情で長期預かりとなってしまっている車両がある場合、これを適法に撤去するためには、訴訟→判決→強制執行という手順を踏まなければならない(勝手に撤去してしまうと、後で所有者から損害賠償請求を受ける恐れあり)。
本件の自動車はかなりの高級車であったが、枢要部が故障していたこともあり、強制執行時の査定でも値段がつかなかったため、自動車強制競売とはならずにそのまま撤去・廃車できて何よりであった。