紛争の内容
名義貸しによる賃貸借であることが発覚し、入居者との契約手結に至らず、賃料相当の支払い意思もないことから、明渡に至った事案。
訴訟などの経過
1 駅前マンションの一室の定期賃貸借の終了を迎え、再契約の時期を迎えた。
2 第1期契約には、保証会社がついていた。
3 次期契約を締結するにあたり、入居者を訪問すると、契約名義人以外の人物が居住。
4 契約名義人とも連絡取れず、仕方なく、現入居者と契約締結交渉をするが、保証審査も受けてくれない。
5 賃料(使用料)も支払わない。オーナー親子は、退去を望み、相談に見えた。
6 原入居者のもとには人の出入りがあり、また、仕事も何をしているか不明であったことから、占有移転禁止仮処分から行う。
7 仮処分執行当日、債務者である原入居者は、別件でも立退き事案を経験し、金銭的解決による相当の立退料を得たことを自慢げに話すような人物。当方は、粛々と手続をとると宣言。
8 契約名義人、原居住者を相手に訴訟提起。被告ら不出頭。
9 債務名義を得て、明渡の催告執行当日には、入居者は在室し、明渡期限と断行期日を伝えた。
10 断行期日には、同入居者は不在。廃品と、エアコン室外機のみが残されていた。
本事例の結末
強制退去実現。なお、賃借名義人の所在は判明せず、債権執行は不奏功。
本事例に学ぶこと
賃借名義人が、保証審査も通る場合、賃貸人オーナーは、賃料不払いの危険がなくなるため、安心しがちです。
悪質な人物と組んだ契約名義人(勤務先からの収入証明は事実)が、物件引渡だけ立会い、その後、名義借人が居住し続けることがあります。
本件は定期建物賃貸借であり、更新制度がありませんでした。
再契約締結交渉となり、名義貸しが発覚したものです。賃貸借途中において、名義貸しが発覚すれば、保証会社も対応しません。
入居者が自ら賃借する信用のない人物でした。このような人物が素直に任意退去することは期待できませんので、保全処分から入ること、訴訟、強制執行となります。結果、これが経済的な方法でしょう。