1占有移転禁止の仮処分
賃借人以外の第三者が建物を占有している可能性がある場合に行う手続です。
そのような心配がなければ、不要な手続で、実際にこの手続をおこなう必要があるケースはあまり多くはありません。
2滞納賃料支払催告と賃貸借契約解除の通知
建物を明け渡してもらいたいということであれば、まず賃貸借契約の解除をする必要があります。
賃貸借契約を解除をするには、滞納賃料の額を明記し、一定期間(金額にもよりますが、通常5日くらい)内に支払わない場合には契約を解除する旨の内容証明郵便を賃借人に送ります。
例えば、次のような文章になります。


催告書

 私はあなたに対し、後記記載の貸室を1ヶ月あたり、家賃9万円、共益費1万円の合計10万円で賃貸していますが、あなたは平成○○年5月分から同年7月分までの家賃・共益費合計30万円(1か月10万円)の支払いを遅滞しています。
 よって、本書配達後5日以内に上記30万円全額をお支払いいただくよう催告します。万一、お支払いがない場合は、改めて契約解除の通知をすることなく、あなたとの間の上記貸室賃貸借契約は解除されたものとして扱いますのでご了承下さい。

           埼玉県○○市○○町6丁目5番
           家屋番号 ○○番
           軽量鉄骨造りスレート葺2階建アパート205号室
           床面積 ○○平方メートル
平成○○年8月5日
埼玉県○○市○○町6丁目8番12号
○○アパート205号室
乙川 康夫 様

埼玉県○○市○○町3丁目3番6号
甲野 一郎

内容証明郵便と同時に、特定記録郵便も送っておくとより確実です(特定記録郵便はポストインですが、内容証明郵便は「不在」や「受領拒否」などの理由で返送される可能性があるからです)。
指定した期間内に、賃借人が支払いをしない場合、賃貸借契約は解除されたことになります。

3建物明渡し請求訴訟の提起
契約が解除されたからといって、無断で建物内の物品を撤去することはできないので、賃借人が建物を明け渡さない場合、賃貸人は滞納賃料の支払いと建物明渡しを求める訴訟を提起します。
4明渡しを命じる判決
提起した訴訟で明渡しを命じる判決が言い渡されます。
それでもなお、賃借人が物件を明け渡さない場合は、次の強制執行に進みます。
5明渡しの強制執行
判決言渡し後も賃借人が物件を明け渡さない場合は、強制執行という手続をおこない、裁判所の執行官の立会いの下で、建物を賃貸人に明け渡してもらうことになります。
建物明渡しの強制執行をする場合、まずは約1か月の予告期間を設けて任意に明け渡すことを賃借人に促し、この予告期間を過ぎても明け渡さない場合には、強制的に退去させる手続(強制力をもって賃借人を立ち退かせ、建物内の物品も全て運び出す作業)をおこないます。

ご依頼にあたりご用意頂く書類

  1. 建物賃貸借契約書(お手元にあれば原本。更新がある場合は、以前の賃貸借契約書も)
  2. 賃料滞納の期間と額が分かる表、預金通帳など
  3. 賃貸物件の不動産登記簿謄本(最新のもの。お手元になければ当事務所で実費をいただき取得いたします)
  4. 賃貸物件の固定資産評価証明書(最新のもの。お手元になければ当事務所で実費をいただき取得いたします)
  5. 賃借人に出した通知などがあればその通知

賃料滞納・建物明け渡し事案の特色

 (1) 勝訴の可能性が高いこと
 賃借人が家賃を滞納してきたことは争い難い事実ですから、家賃滞納を理由とする建物明渡訴訟はオーナー様が勝訴できる確率が非常に高いものです。
 (2) 早期解決が可能であること
 ご依頼を受けてから、訴訟を起こし、明渡しを命じる判決を取得し、その後、明け渡しの強制執行により賃借人が退去しますが、6ヶ月以内に解決がつくものがほとんどです。