さて、賃貸借契約が解除できたら(「占有移転禁止の仮処分」が必要なケースではさらにそれを行った後)、次のステップである「明渡訴訟の提起」に進むことになります。
①明渡訴訟の提起
明渡訴訟を提起しさえすれば、明渡の裁判の相手方(裁判では被告と呼ばれます)となった入居者が、速やかに物件から退去してくれるわけではありません。
居座り続ける入居者を退去させるには、明渡訴訟を提起して、まずは、裁判所から明渡の命令(明渡判決)を出してもらわなければなりません。
②明渡訴訟の管轄裁判所はどこか?
賃貸人は、自らが又は弁護士などに依頼して、明渡の民事裁判を提起することになります。
民事裁判を提起する裁判所は、原則として、当該物件の所在地を管轄する地方裁判所・簡易裁判所となります。
埼玉県内でも、さいたま市内に存在する物件については、さいたま地方裁判所・さいたま簡裁が管轄となり、越谷市、草加市、春日部市所在の物件については、さいたま地方裁判所越谷支部・越谷簡裁が管轄となります。
東京都23区内所在の物件については、東京地方裁判所・東京簡易裁判所が管轄となります。
③地方裁判所がよいのか、簡易裁判所でよいのか、その違いは何?
不動産の明渡についての民事裁判は、当該物件の固定資産評価額から算出した経済的利益が、簡易裁判所の管轄となる140万円以下の場合であっても、地方裁判所に申立をすることができます。
地方裁判所における民事訴訟事件においては、その代理人は弁護士以外はなれません。一方、簡易裁判所においては、裁判官の許可を受けて、弁護士以外の、入居者の親族なども代理人になることができます。
しかし、入居者の親族などが代理人として裁判に出てくる場合、往々にして法的には通らない主張がなされたりして、裁判がいたずらに長引いてしまうことがあります。
速やかな明渡実現のためには、裁判手続きに、法の専門家以外の者が関与するのをできるだけ避けることがよいため、我々弁護士は、財産上の価格が140万円以下の場合であっても、地方裁判所に申し立てることにしています。